ポータブルヘッドホンアンプ PR(PetitRabbit) X6


まずPR X6。
X6は「クロスシックス」と読む。
でも、「かけるろく」でもいい。

 

昔々、10年以上前に作ったアンプを、今の知識と技術で改良リメイク。つまり、もう別物。
コンセプトと、当時実験して決めた構造くらいしか、引き継いでいるものがない。
過去にいくつか似たようなアンプを設計しているけれど、ほぼすべて見直している。
(ただし、理論的に見直した結果、ほぼ同じになっている部分も多い。)
なんにしても、今の自分の制作物に入れるためには、それくらいやらないとね。

ケースの大きさはWRと変えず、何とかしてハイパワー化、大音量時の低歪み化を目指したもの。
私の熱狂的なファン(そんなのいない)は、WRと同じケースに単四電池を6本入れたアンプに覚えがあるはず。
あれが考え方の原点。

設計、部品選びからきっちり行い、ゲインが低く、
ボリュームもついているヘッドホンアンプでも十分な音質と特性を確保。
リターンパスはWRほど詰め込めなかったので(基板の使える面積が狭いため)、
比較すると空間表現に若干差がある。

電源スイッチはMOSFETをパラにし、実測で超低オン抵抗を実現。
ベース機と比較すると、いろいろな個所が改良されており、音質は大幅向上。
出力部は、当方のアンプにしては珍しく(実は電池駆動だとそう珍しくもない)、ICとしている。
重たい負荷でも歪みの増加は最小限、振幅減少も最小限のものを、実測して選んでいる。
これにより、最大出力も大きく、大音量でも音がクリップしない・割れない、
どこまでも上げていけるフィーリングを得た。

出力端子は3.5mm4極端子。
3極プラグでも使える使いやすさと、4極にしたときのフィーリングの良さを両立。
(3極でも音良いと思うけどね。私は3極で使うことも多いし。)

電池は特性と耐久性から、三洋およびパナソニックのエネループ。
それ以外でお漏らししたとかは一切知らない。



特徴は以下の通り。

・回路はいつもどおり、理論上良いものを設計し、
 細かい部分は実測しながら詰めていった。

・電子部品も、いつもどおりデータシートを見つつ選択。

・WRと同様に、電源スイッチはMOSFETをパラにして、
 実測で超低オン抵抗を実現。
 これは配線を太く・短くするのにも貢献している。

・理論上効果が大きい一部の受動部品には、
 一般的な高性能品をさらに超える高性能な部品を投入。
 うちの測定限界以下なので数字上は変化出ないけれど、
 理論上最も効果がある個所に入れている。
 音の質は、適切な個所に入れればもちろん変わる。

・入出力コネクタは、すべての電極の材料およびめっきが同じものを選択。
 うちで使う4極品は、今のところすべてこれを採用している。
 1極だけ材質やめっきが異なるジャック使っているもの、結構見かけるヨ。

・出力は実負荷でも電源レールぎりぎりまで振れる。
 そのため実現できた、最大出力に余裕を持たせた特性。
 (最大出力は、歪みが増加しない範囲で使用している限りで使用するなら
 音質とは関係ないけれど、余裕あるほうが使い勝手は良くなる。)

・最大出力付近でも歪みの悪化はなく、きれいな右下がりグラフ。
 (通常の逆レの字型グラフ。)

・出力端子は4極なので、ヘッドホンのプラグは4極のものを使える。3極も使える。

・駄目押しの厚さ2倍銅箔基板。(通常は1ozの35um・2倍は2ozで70um。)




特性

周波数特性:約2.2MHz(-3dB)

利得約3.2倍、BW:80kHz、33Ω負荷
THD+N
 

0.001%付近で横軸と水平になるのは測定限界。
10kHzは測定器単体のループバックでも値が悪いので、参考程度に。

1kHzと100HzのTHDは、最大音量(クリップ直前まで)まで常時0.001%を切っているものと思われる。
微妙に最大振幅が異なるのは、電池を使って測定していて、
ちょっとだけ電圧が落ちてきているため。

※上のグラフの横軸は実効値。
 実効値(VもしくはVrms)をVp-pにすると、2.0Vは5.7Vp-p程度、2.5Vは7.1Vp-p程度。


最大出力:33Ω負荷で170mW〜(電池の電圧による。)
入力インピーダンス:約10kΩ(1kHz)

出力インピーダンス:0.12Ω(1kHz)、0.13Ω(10kHz)
…なので、余裕見て0.2Ω以下くらいと書いておけば良いかな?
 ※出力端子直前(アンプ回路から出力端子までの配線の合計)で実測。回路直近ならもっと小さくなる。
 ※容量負荷接続時の安定性を確保するためのコイルを含む値。
 ※実測値を書いていないメーカーや、配線を含まない値を書くところも多いので比較する際は注意が必要。
 ※電流注入法による。

電池のもち:20時間〜 ※ただし音量による。

長辺方向は100mmもない(突起を除く)ので、かなりコンパクト。


100kHz矩形波応答波形。無負荷。
上:出力0.5V/DIV、下:入力。
 


33Ωクリップ波形。1kHz。1V/DIV。
電池が微妙に1.2V/本超えているけれど、だいたいこれくらい。
 


 

――

カットオフ周波数は、ちょっと調整すれば5MHzくらいまでは伸ばせるけれど、
これはこれくらいでいいんじゃないかなって。
これは仕上がりのカットオフであって、増幅回路のカットオフ自体は
ずっと高いので、フィードバック量もかなりある。

ちなみに、フルパワー帯域幅がスルーレートに依存するのはご存じの通り。


個人・メーカー問わず、どうかしているところ(今は多い)だと都合の良いデータのとり方をしたり、
都合の悪いデータを載せなかったりするけれど、私はそういうことしない。
そういうの嫌いだし、それは正直なやり方だとは思えないから。



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