・正統派構造で高性能な小出力パワーアンプ

※初掲載時に書いていた入力の変換回路が足引っ張っている問題を解決するべく、
 その部分を外してしまい、なかったことにしました。

※前半を削除しました。



ケースは使いまわし。ヘッドホンジャックも穴埋めのためで、現在は未接続。
 

2021年〜2022年ごろいじっていた気がするのだけど、作ったのは2019年かも?
試したいことが色々とあるので、結局今年もいじっています。基板2枚目。
メイン回路の改良調整以外だと、入力後にあったバランス→アンバランス変換を外しました。
それに伴い、入力端子をコンボからRCAに変更。
内部配線の長さが足りなくなったのでベルデンの8412に変更。これしかなかったので。
わかっていたことですが、かたくて使いにくいです。

構造は通常の電圧帰還アンプ。
回路構成は1段目差動、2段目差動、電流増幅段は3段。
出力段はパラレルにせず。出力段のパワートランジスタは2SC5198と2SA1941のコンプリ。
初段2SK209(無選別)、それ以外は2SC2712・MMBT3904・TTC004・2SC5198とそれぞれのコンプリ。
一部、2SC1815も使っています。
使用しているチップトランジスタの特性は、S2C1815・2SA1015と大差ないです。※コレクタ損失は厳しい。
DCサーボ用のオペアンプはTIのオーディオ用です。これはネタとしてわざとやっています。
あと、色々とあって現在は出力段のドライバ用トランジスタが左右で違っています。

初段のFETはデュアルではありませんし、選別もしていません。
オフセット電圧を無視すれば、この程度の特性は「適切に設計すれば」選別せずとも出ます。
不必要な選別をするとコストが上がりますから、しなくていいならばしないほうが良いと考えています。
選別に頼ると、同じものを再現しにくくなりますしね。
そもそも、チップ部品を選別する場合、どうしても押さえて
固定しなければならないので温度がね…揃わんのですよ…。
(温度の伝わりにくい道具を室温まで暖めて、それで押さえながらサクサク測るしかないと思う。)

定電流源が必要になる部分は、すべて1つの電流源からカレントミラーで作っています。
(初段テール電流・ブートストラップの電源・カスコードの電源等)
部品が増えるので、ユニバーサル基板を使っていたころならやっていないでしょう。
もともと電圧変動に強い回路なので、これは個人的なこだわりが大きいです。


以前の状態ではちょっと気になる部分があったので、
帯域幅を狭める(カットオフ周波数を下げる)のに初段gmを少し下げました。
部品つけるスペースがなかったのは、気合いで突破です。
空中配線したり、チップ部品が縦についていたり、
パターンがないところに部品ついていたり、大変なことになっています。

初段gmを下げることで狙い通りに帯域幅は狭まりますが、初段で発生する雑音が増えます。
その代わり補償容量が増えていないので、スルーレートは犠牲になりません。
もうすこーしだけ下げたいですが、このあたりは各数値とよく相談で。

帯域幅は8Ω負荷時1.5MHz程度(出力のコイルで制限される)、無負荷2.6MHz程度。スルーレート60V/us程度。
利得は+21倍(26.4dB)。最大出力10W程度。アイドリング電流約50mA(温まると増えるけれど、100mA以下)。
8Ω負荷9.5W出力の時、20Hz-20kHzで雑音歪率0.0032%以下(BW80kHz)。※測定限界なので正確な値は不明。
4Ω負荷10Wで0.0052%。この4Ωの値はちょっと疑問があるので、要調査。

0.01Wから11Wまでの、10kHzにおける雑音歪率を以下に示します。1kHzではありません。

 

少しうねっていますが、0.003%あたりが測定限界です。
4W付近から0.0032%になっているのは測定器側の問題です。
旧式の歪率計を使っているので、どうしてもね。
部品が劣化して(これは調べて確定)調子を崩しているので、もう別の歪率計にしたいです。

それはともかく…。
このグラフから、ノイズは34uV(BW80kHz)でしょうか。
A補正なら13uVくらいになると思います。雑な計算なので、ちょっと違うかも。
インナーシャーシやシールド用の鉄板は一切入っていません。

カットオフ周波数がパワーアンプとしては高いのは、帰還量を増やして出力段の歪みを下げるため。
負荷接続時に制限されるのは、発振防止用のコイルのためです。
最大出力はグラフからもわかるように10W程度。ちょっと小さいかなと思いますが、
DCサーボの電源を電圧増幅部から直接とってしまっているので、電源電圧を正負18V以上には上げられないのです。
出力のわりに利得が大きいのは、こうしないと他の機器と比較するときにフェアではなくなるから。
ようするに、他の機器に近い値にしてあるだけです。利得小さくてしまうと、雑音も歪みも有利になりますので。

入力インピーダンスは、配線や初段の入力容量が無視できる範囲で330kΩ。
パワーアンプとしては高いです。低くする理由もないので。


とりあえず一旦終了です。
私は計算して作って測るのが趣味みたいなところがあるので、今はいじり終わって放置されています。
おかげで、なかなかホームページのネタにすらならないです。
でも、せっかくやったので使ってみましょうかね。
4Ωのスピーカーでもレスポンスの良い音が出るでしょう。適切な箇所に適切な部品が入っているので。
出力段のドライバ用トランジスタが左右で違っていても、大きく音が変わることはありません。
(全く変わらないわけではない。)
それよりも音が圧倒的に良いという印象のほうが強いと思います。
DCサーボは入っていますが、カップリングコンデンサはないので、音への色付けは少ないです。


ちなみに、現代の汎用部品で、最小構成でパワーアンプを作る場合、帯域幅は1MHzでも厳しいと思います。
昔は流通していた高性能な小信号用トランジスタも、あまり手に入らなくなっちゃいましたしね。
ここでは平気で1MHzだの2MHzだの書いていますが、試す際はどうぞご安全に。
※あくまでも最小構成の話であり、今の汎用部品でも知識があれば問題なく動く回路は設計できます。



ご参考までに、国内有名メーカーのパワーアンプ・プリメインアンプの歪み率を記載しておきます。

・DENON PMA-SX1 LIMITED (数値は取扱説明書から引用)
8Ω負荷定格出力・20Hz-20kHzで0.1%
4Ω負荷定格出力・1kHzで0.7%
8Ω負荷定格出力-3dB・1kHzで0.01%
利得は29dB(28倍)

・YAMAHA M-5000 (数値はメーカーホームページから引用)
8Ω負荷50W出力・20Hz-20kHz・2ch駆動・LINE→SPEAKERSで0.035%
利得は入力感度から計算すると約28倍か。

・ESOTERIC Grandioso M1X (数値は取扱説明書から引用)
8Ω負荷300W出力・1kHzで0.006%
 特記事項:1kHz以外不明。出力にコイルなし。

・Accuphase A-300 (数値はカタログから引用)
20Hz-20kHz・4-16Ω 0.03%
 特記事項:この値の時のゲイン設定は不明。
      出力は歪みが悪化しない程度に大きいあたりだと思う。

・LUXMAN M-10X (数値はメーカーホームページから引用)
8Ω負荷・1kHzで0.003%以下、8Ω負荷・20Hz-20kHzで0.04%以下。
利得は29dB。
 特記事項:出力は歪みが悪化しない程度に大きいあたりだと思う。


このページに掲載している私のアンプは利得が21倍(26.4dB)なので、歪みや雑音は
・29dBのアンプと比較する場合は値を1.35をかける。
・22dBのアンプと比較する場合は値を1.66で割る。
で、だいたい換算できます。
実際にその値にするなら少し調整が必要になって、値は変わるでしょうけどね。


利得や歪みについての解説・感想はメモのページにて。

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初回と2回目の文章はなかったことにしました。

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2023年8月。

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