・出力インピーダンス測定方法・測定方法による誤差

測り方によってはね、結構な誤差がね…出るんですよ…。
なんなら、わざと小さく見せることもできたりする。


・測り方1 on-off法

出力トランスが入っている真空管アンプ時代には
あまり正確な値が取れなかった方法だけど、半導体時代では「ちゃんとやれば」使える。

やり方は以下の通り。

 

RLを負荷インピーダンスとすると、出力インピーダンスZoは、

Zo = {(E1-E2)×RL} / E2 

( Zo = (E1-E2) × (RL/E2) と書いたほうがわかりやすいかもしれない。)

で求まる。
これでも、正確に電圧およびRLを取れば、そう大きくはずれない。
正確に取れば……。

例えば、できるだけアンプに近い位置や、何ならアンプ基板直近で電圧を取って、
計算するときのRLは負荷単体のインピーダンスとしておくと、出力インピーダンスは実際の値より小さく算出される。
正確に測るには、ケーブルやコネクタのインピーダンスなども含まなければならない。
しかし、4ワイヤーで低抵抗が測定でき、かつ自由な周波数でインピーダンス(DCRではない)が
測れる環境は、あまり一般家庭にないと思う。

このようにすると、意図的にこの測り方をすると値を小さく見せることができてしまう。
わざわざそんな測り方するのは、ゲスな人だけだって?
意外とそうとも限らなくて、出力端子の影響を減らしたくてアンプ筐体内側で測定するとかして、
それでもRL=8Ωなんかで計算すると、小さく出てくる。

そんなわけで、この測り方は、よほど信用できる技術者が測ったもの以外は、参考にもならないと思っている。
信用できる技術者は、特に事情がない限りこんな測り方しない気がするけれども。



・測り方2 電流注入法

やり方は以下の通り。

 

注入する電流をIとすると、出力インピーダンスZoは、

Zo = E / I

外部から電流を注入して、そのとき被測定アンプに生じる電圧降下を測定し、出力インピーダンスを求める。

この方法のメリットは、電流を正確に取れれば誤差が小さいこと。
また、測定位置を変えて負荷端やアンプの出力端子直後で測定しても、
それぞれのインピーダンスを含んだ正確な値が得られる。

上記の図および式は概念に近いので、より実用的なのはこういう形。

 

出力インピーダンスZoは、

Zo = (E2×R) / (E1-E2)

このとき、R直近で電圧を測れば、Iの誤差は少なくできる。(もちろん抵抗値もわかっている必要がある)
Iが出れば、あとはかなり正確に算出できる。




2種類の方法で実際に半導体アンプを測ると、正確な測定位置なら、パワーアンプではそこまで大きな差はない。
一方、コネクタの接触抵抗が比較的大きくなりがちなヘッドホンアンプなんかだと、
on-off法で測り方がおかしいと、数%くらい簡単にずれる可能性がある。

データは、その取り方や条件の書き方で、どれだけわかっている人が
取っているかわかるので、そのあたりをちゃんと見極めて使いましょう。
そのデータがどういう意味を持つかわかっていない人が測ったデータは、
間違いも多いし、何の意味も持たないので、変なデータは見る価値ないんです。


―――

2021年7月


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