・抵抗器の特性と値段、あと音の差の話 オーディオ用抵抗とか売っているけれど、その効果を疑問視する人も少なくない。 カーボン抵抗が至高だのと言う人もいる。TCRの悪いカーボンが良いわけないんだけども。 あまりにも……なので、抵抗の差を理論的にちょっと読み解いていく。 なお、私はよほどのことがなければオーディオ用の抵抗は使わない。 工業用・測定器用・車載用の高精度品を選ぶことはある。 まず大前提として、どこに入れても効く部品というのはない。 銅線でつないであるところにわざわざ抵抗を入れて良くなるなんてことはない。 (安定してない回路に抵抗足したら安定した、みたいなのはあるけども。) 通常のオペアンプ回路において、高性能な部品で大きな効果があるのは、 増幅回路内の負荷抵抗(特に初段)と、フィードバック。 特にフィードバックは、許容損失とTCR(温度係数)によって特性にはっきりと出る。 だけど、これらも室温での絶対的な抵抗値の誤差はそんなに重要ではない。 入力部が差動のアンプ初段負荷は、相対的な特性と温度が揃っていればいいし、 フィードバックもゲインを超精密に決めるとき以外は、抵抗値の誤差そのものはあまり気にする必要がない。 とはいえ、高性能で高価な抵抗は、絶対的な誤差も、温度係数も、小さくなっていくんだけども。 さて、実際に入手しやすいオーディオ用抵抗の特性はどうなっているか。 千石電商で売っている、タクマンのオーディオ用カーボン抵抗REXと、 オーディオ用金属皮膜抵抗REYのデータシートを見ていく。 まずREXなのだけど…カーボン抵抗は基本的にTCRが悪い。 そして、このREXもそれに漏れず、やっぱり値が悪い。 これでは個人的に選ぶ理由がないし、試す理由もない。 カーボンは雑音も多いしね。 次はREY。こちらは金属皮膜なので、±100ppmと±50ppmがラインナップされている。 普通の金属皮膜抵抗が±50〜200ppmくらいだから…効果がないとは言わないけれど、どうだろう。 1Wモデルもラインナップされているし、最高使用電圧も高いので、使い勝手は割と良いと思う。 千石は通常の金属皮膜抵抗もタクマンのRLCに置き変わっていたはずで、 これも許容損失とTCRは似たようなもんなので、1/4Wとかならこっちで良いかもしれない。 以前扱いがあったKOAの金属皮膜抵抗だって、低抵抗値以外は±100ppmだったはずで、割と良かった。 思ったより特性が良くないし、私が使うことのある高精度品とは比べることができないくらい差がある。 必要なときは、TCRが±10ppmや±25ppmを選ぶので。。(もちろん、それなりに高い。) これまで、結構いろいろな抵抗のデータシート見てきたけれど、 正直、効果がありそうなものから、そうでないものまでピンキリだったりする。 抵抗器は抵抗体によって固有の物理的な特徴を持つから、 用途と設計とコストに合わせて適切に選択すれば良いのではないかと思う。 ― あと、抵抗値…もっといえば、回路設計が超大事です。 部品だけでは何も決まらないし、チェンジニアはエンジニアじゃないです。 ――― 2021年7月 トップページへ © 2021 Nono |
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